自治体DXとは?目的や課題・参考事例をわかりやすく紹介

2023年7月31日
自治体DXとは?目的や課題・参考事例をわかりやすく紹介

近年、よく耳にするDX(デジタルトランスフォーメーション)

令和2年12月、日本政府は「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」を公表し、新たなデジタル社会のビジョンを提示しました。
そのビジョンとは「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会 〜誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化〜」というものです。

現在は国や企業だけでなく、住民の生活を保護するため、さまざまなDXが進展しています。

具体的な取り組みとしては、プレミアム商品券の電子化、デジタル採用面接の導入、行政手続きのオンライン化などが挙げられます。
この記事では、自治体のDXの背景や課題、取り組みの具体例を紹介していきます。

自治体DXとは?

DXとは、デジタルトランスフォーメーションのことです。トランスフォーメーションがどうしてXになるかというと、その由来は、英語のtransの持つ「変える」「超える」という意味がcrossとほぼ同じ意味であることからです。

自治体DXとは、地方自治体がデジタル技術を活用して行政の運営やサービスの提供方法を変革し、より効率的かつ効果的な行政を実現する取り組みのことを指します。

ウェブサイトやモバイルアプリケーションを活用した行政サービスの提供、オンラインでの手続きや申請の受け付け、データ分析による効果的な政策立案、クラウドコンピューティングの活用などが含まれます。

自治体DXの目的

DXの目的は、デジタル技術を企業活動や生活に取り入れることで、人々がより幸福で便利な生活を送ることを実現することです。自治体DXは、国民のより良い生活を促進するために行われる特有の取り組みです。

DXが求められる理由

少子高齢化の加速

少子化が進むと、労働人口が減少し、特に高齢化が進んでいる地域では労働力不足が深刻化します。DXを導入することで、自動化やロボティクス、AI技術を活用して業務を効率化できるため、限られた労働力でも生産性を維持することが可能となります。

新型コロナウイルスによる影響

コロナ禍でのテレワークにより、我々はDXの必要性とその遅れを強く意識するようになりました。紙の書類を取り扱う業務や対面での業務は、テレワークを妨げになったため、業務のデジタル化が進みました。

DXレポートの影響

DXレポートとは、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進することを目的に経済産業省が発表したレポートです。

そこには「2025年の崖」という言葉があり、日本企業がDXの取り組みを十分に行わなかった場合、2025年以降に年間で最大12兆円の経済損失が発生し、国際競争力を失うという課題が示されています。

自治体DXの先行事例

町の広報紙等をWEB上で誰でも、いつでも見ることのできる環境
【宮城県丸森町】

丸森町では、町の広報紙「広報まるもり」等を電子書籍化した上で、ちいき本棚(電子回覧板)を用いて公に提供しています。

電子書籍化することで、印刷部数の制約がなくなり、また、いつでもどこでも町に関する情報をタイムラグなく届けることができるようになりました。

利用者はアプリから自由に閲覧することができ、整理された情報から選択したり、過去の情報も見ることができます。

マイナンバーカードを利用した健康ポータルでの電子お薬手帳機能
【高知県南国市】

広島市では、大規模災害等の発生時に被災者が被災状況に応じて、受けることができる見舞金、税等の減免などの支援策が確認できる「被災者支援ナビ」を導入しました。

ユーザーは事前に設定された質問に回答したり、関連する項目にチェックを入れることで、自分に適した支援策を見つけることができます。また、支援の概要や必要な手続き等についても、確認することが可能です。

地域の要望に応じた高齢者向けスマホ教室の開催
【山口県宇部市】

山口県宇部市は、市内の24地区のふれあいセンターで、計2回のスマートフォン講座を開催しています。各地区の要望に基づいて、初級編、検索編、アプリ編、LINE編などの講座内容が選定されます。参加者は同じ内容の講座を2回受講することもできます。
この取り組みでは、無償のボランティアスタッフや地域の中学生、高校生、大学生がサポート役として参加し、多世代間の交流を促進しています。山口県宇部市は、住民同士のコミュニケーションを推進しつつ、スマートフォン講座を展開しています。

自治体DXの実現に向けて必要な取り組み

柔軟な組織体制

自治体DXを進めるには、柔軟な組織体制が不可欠です。特定の自治体や省庁に限らず、あらゆる組織や部門が横断的にDXを推進できるような仕組みを整え、迅速に進展させる必要があります。
なぜなら、各部門での承認が得られなかったり、調整作業に多くの時間がかかったりすることを防ぐためです。そのためにはある程度、DXに強制力を持たせ、組織全体が協力してDXの推進に取り組むことが必要になります。

デジタル人材の確保・育成

国が提供する外部人材確保の支援サービスを活用し、積極的にデジタル人材を採用する姿勢が重要です。ただし、外部からの人材確保にも限界があるため、各自治体では独自にデジタル人材を育成し、DX施策を支えるためのリソースを内部で確保する努力も必要です。

計画的な実施

総務省が2021年に公開した「自治体DX全体手順書」ではDX推進の手順が紹介されています。

1. DXの認識共有・機運醸成

2. 全体方針の決定

3. 推進体制の整備

4. DXの取組みの実行

DXは場当たり的に進めるのではなく、事前に大きな計画を策定することが重要です。その計画に基づいて、施策を一つずつ着実に進めていく慎重さが求められます。段階的なアプローチで目標に向かって進んでいくことで、効果的なDXの実現が可能となります。

自治体DXの課題

人材不足

ITに関する知識とシステム操作のスキルを持った人材は需要が高く、その確保が難しくなっています。リソースを増やすためにも確保と育成の両方が必要です。

既存業務の業務負荷

DXを導入するにあたって、業務が増えることで、既存の業務に影響が出る可能性があります。人材を確保するなど、既存業務を圧迫しない工夫が必要です。

住民への周知、ITリテラシーの不足

自治体がDXを促進しても、住民に周知できなければうまくいきません。

教育の強化や公民館や図書館のIT教室、オンライン教育などの導入、またシニア向けの支援策など、ITリテラシー強化のためのサポートをする必要があります。

課題を洗い出してDXに取り組もう

自治体DXの事例や課題についてご紹介しました。

DXと一言で言っても、そのプロジェクトの中で検討すべき点や、アプローチの方法はさまざまです。

まずは課題を洗い出した上で民間企業とも協力しながらDXを進めるべきでしょう。

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